キッチンBGM

「いただきます!」までの、心ととのう音楽とともに

Vol.1 曽我部恵一さん

野菜を手にする前に、包丁を握る前に、火に向かう前にーー。そっと背中を押してくれるメロディがあれば、料理をつくる手も心も晴れやかに。さて今日は、どんな音楽と、どんな一皿をつくりましょうか。台所に寄り添うとっておきのプレイリストをご紹介します。

曽我部恵一さん

90年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト/ギタリストとして活動を始める。1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。'70年代の日本のフォーク/ロックを'90年代のスタイルで解釈・再構築したまったく新しいサウンドは、聴く者に強烈な印象をあたえた。2001年のクリスマス、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル「ギター」でソロデビュー。2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント/DIYを基軸とした活動を開始する。以後、サニーデイ・サービス/ソロと並行し、プロデュース・楽曲提供・映画音楽・CM音楽・執筆・俳優など、形態にとらわれない表現を続ける。

https://www.sokabekeiichi.com

気持ちのリズムに寄り添う音楽を

アコースティックギターの音色、心地のいいメロディー。曽我部さんのつくる楽曲は、私たちの生活に寄り添い、幸せな時間を思い起こさせてくれます。それこそ、おいしそうなごはんのにおいがしてくる感じ。曽我部さんにとって、暮らしと音楽の関係を聞いてみると、「実はあまり生活空間には流さないんです」との答えが。音楽は自室にこもって聴くことがほとんどとか。

「子どもたちもそれぞれ好きな音楽があるし。それこそ料理をつくることって、自分にとってはギターを弾いていることと同じ精神というか。料理って匂いや味を確かめたり、焼ける音を聞いたり、集中した状態。だから割と静かでいいんですよね、僕は。かけるとしたら静かなピアノ曲とか、ジャズとか言葉がない方が好きですね」

曰く、音楽は写真を見るのと同じように、能動的に聴くもの。だからこそ音楽を流しながら料理をつくることはないけれど、「料理を作り始めるところから、完成するまでの気持ちのリズムは音楽に置き換えることができるかもしれない」と曽我部さん。

そう言って今回、全8曲のプレイリストを作ってくれました。音楽に背中を押されながら手を動かしているうちに、「いただきます!」が聴こえてくるーー。聞き終わるころには、一皿の出来上がり。

曽我部恵一さんのキッチンBGM
テーマ:「いただきます!」
までの、心ととのう音楽

「料理って作り始めるまでがちょっとおっくう。でも手を動かしているうちに、だんだん気分がのってくるもの。あれとあれで何作ろう? と段取りが決まって、子どもたちが喜ぶ表情を想像しながら作り始めると楽しくなっていくんですよね。」と曽我部さん。そんな料理の準備から、調理、出来上がりまでの気持ちにそっと寄り添ってくれるプレイリスト。

※視聴するにはspotifyのアプリをダウンロードしてください。

  1. ① Simon Jeffers - life boat(Oskar Und Leni - O.S.T.)

    料理を始める余韻の時間に。幸せな時間が始まる予感でいっぱいになる日差しに溢れた音楽。

  2. ② Herbie Hancock - maiden voyage

    料理のはじまりは緊張感と期待感がありますよね。そんな気分をちょっぴり盛り上げてくれる一曲。

  3. ③ 南正人 - 紫陽花

    じっくり、あせらず、しかし想いをこめて。大切な人への料理は、やはり大切な時間です。

  4. ④ Martin Denny - Mau Mau

    だれかの喜ぶ顔を想像しながら、そしてどんな話や笑い声が聞こえるか考えると楽しくなってきます。

  5. ⑤ Minnie Riperton - Lovin’ You

    料理はやさしさ、喜び、そして愛。

  6. ⑥ Kraftwerk - Europe Endless

    料理に集中して、最後の大詰めです。

  7. ⑦ Joe Gibbs & The Professionals - Majestic Dub

    ときには最後の最後に大胆なアレンジを加えることも、おもしろいかも。今日の食卓が何色に染まるか、最後まで楽しんで。

  8. ⑧ Helge Lien Trio - Natsukashii

    さあ、出来上がり。美味しい匂いに包まれると、ちょっとだけ懐かしい気分にもなりますね。どうぞ、召し上がってください!

食卓の記憶は子どもたちへのギフト

「今日もこのあと、夕食の買い物に行く予定です。冷蔵庫に肉と玉ねぎしかなかったんで。子どもたちのことを考えながら『さて何作ろうかな』って考えられる日はうれしい、楽しいですよ」

取材の日、晩ご飯の予定を伺うと、そう話してくれた曽我部恵一さん。3人のお子さんを育てるお父さんでもあります。上の2人の娘さんはすでに成人し、末っ子の息子さんは現在高校生。いわゆるシングルファザーになったのは、約10年前のことでした。今でこそ、ひと通りの家事の段取りがつかめてきましたが、当時はすべてが大変だったと振り返ります。

「ライブで出張もありましたし、生活スタイル全体を変えなきゃという感じだったんで、何をどうしたらいいのかと初めは途方に暮れました。洗濯や掃除は周りの人に手伝ってもらえても、子どもたちを朝起こすことから始まって、お弁当作りとか、晩ご飯作りとか、子どもとの時間に関わるところは大事にしたかったので」

子どもたちを大事に思い、愛しているということをどう伝えるか。そのために食卓を囲む時間を大事にしようと考えていたと曽我部さんは言います。

「自分が子どものころ、両親が共働きで家族でごはんを食べたという思い出がなかったんです。家が自分の居場所と思えなかった。早く自分の居場所を作りたいと家を出たんです。だからできるだけ家族の時間を作りたいっていうことがあったのかもしれない。そしていま、この家は自分にとって安心できる場所だし、子どもたちにとってもそういう場所であってほしい。ほかの家事が完璧じゃなくても、食卓の記憶さえあればなんとかなるかなと思っていたところはありましたね」

曽我部さんの著書『いい匂いのする方へ』(光文社)には、3人の子どもについての記述があります。長女がK-POPのダンスサークルで発表会をしたこと、次女は音楽が好きなこと、長男は映画が好きなことーー。子どもたちを見つめる目がそこにはありました。

「それぞれが夢中になれることを大事にしてほしい。だから子どもたちが好きなことを知りたいということはありますね。そして家は、彼らが安心して好きに過ごせる場所であってほしいから、時間や行動のルールをあえて決めてないんです。食事は何時、消灯は何時とか。正解かどうかはわからないけど、安心して生きられる場所であればいいのかなって」

日々の料理は「子どもの笑顔」が優先

そして実際、料理をすることは楽しいと曽我部さん。仕事のスケジュールの合間を縫って、「子供が喜ぶ料理」を作るそう。子どもはやっぱり肉系が好きですよね。最近は長女が血糖値をあげたくないというんで、野菜サラダも用意。あとは味噌汁と白米が定番です。冷蔵庫にあるもので何ができるか、ネットや料理本を見て学んだりもしますよ。時間的にも手の込んだものは作れないので、汎用性のある食材で作れるものを作っています」

「おいしいね」と言い合えたら、人生は100点

適度に手を抜き、時間があるときは「何を作ろうかな」を楽しむ。そして何より大事にしているのは、「子どもたちとごちそうさまって言えること」と曽我部さん。子どもたちが喜ぶのは、「完璧を目指さなきゃ」と頑張りすぎる親の姿ではないはずです。

「昔は気張っていたこともありましたけど。それはちょっと違うなって。忙しい時は惣菜を買ってくることも、デリバリーサービスだってあり。実際、料理にどれだけ手がかかったかなんて、子どもにはわからないですよね。こっちがどれだけ注力したかよりも、お腹が空いている時にすぐにごはんを食べれたとか、だんだんおかわりができたとかの方が子どもたちも喜んでいるんです。大事なのは一緒に食べること。家族で「いただきます」「おいしいね」「ごちそうさま」って言えたらOK。もうそれで人生100点って思っているんで。毎日じゃなくても、できるだけその時間をつくる。色々できてないことはあるけど、その時間が幸せの目安になっています」

「おいしいね」と言い合える時間のために。

野菜を手にする前に、包丁を握る前に、火に向かう前に。そっと背中を押してくれるメロディがあれば、料理をつくる手も心も晴れやかになるかもしれません。さて今日は、どんな音楽と、どんな一皿をつくりましょうか。茅乃舎だしは煮出すだけで手軽にお料理できることで、おいしさで、忙しい日々をお手伝いしたいと思います。

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