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島原素麺の歴史は、華やかとも順風満帆とも呼べるものではありませんでした。
全盛期と呼ばれる昭和後期にも、名産地の下請け業としての宿命を背負ったからです。
当時、南島原で勢いを見せた素麺業には、農業から転じて多くの人が新規参入し、その数450軒までにのぼります。

その後時を経て、南島原に待ち受けていたのは、自力でのブランド化でした。
今、「島原素麺」は、第二期と呼べるかもしれません。〝島原〟という名のもと、
自分たちでしっかりと歩み出し、九州では夏の贈り物として親しまれて久しく、今、全国へ広げようとしています。

島原素麺が大切にしている
江戸から続く手延べの技。

取材を通して素麺づくりがこれほど大変な仕事だと初めて知りました。細く細く…と、美しい理想の麺に近づくほどに、何倍にも膨れあがる作業工数、気を張る手しごと。気温が上がる日中に麺を乾燥させるためには、毎朝3時から生地をねなければいけません。南島原市内の製麺所のほとんどが、自宅横に加工場が設けられているのは、それが理由。夜明け前からの作業は、家業でしか成り立たないのです。

国産小麦を駆使する職人技。

この地で出会ったのは、「そうめんの山道」本多勇三さん。本多さんのひたむきな素麺づくりへの情熱に惚れ込んで、茅乃舎の素麺を作っていただくことになりました。本多さんは特別な技術を持つ、全国でも指折りの素麺職人。その真骨頂は、国産小麦を100%使って、ノビとコシのある麺を作ること、その素晴らしい職人技に他なりません。国産小麦は、豊かな小麦感を醸し出せる反面、製造時はボソボソとちぎれやすく、扱いがとても難しい。序盤の太麺の時点から失敗が多く、あまりの難しさから、ほとんどの職人が敬遠すると言われます。ところが、本多さんの手にかかれば、みるみるうちに細くしなやかな麺が生み出され、小麦のおいしさとコシを兼ね備えた奇跡のような素麺ができるのです。

「若い頃、他の産地の下請けであることが悔しくて、自分の名前で買ってもらえるようなおいしい素麺を作りたいという気持ちが、国産小麦を使うきっかけとなりました。茅乃舎の素麺には、北海道産の「ゆめちから」をはじめ2種類の国産小麦を使っていて、小麦の風味とコシを表現するための配合を極めています」。

小麦が香り、もっちりと。

茹で上げたときに、もうその違いが分かるつややかな本多さんの手延べ麺。細麺に宿るしなやかなバネ。すすると、麺が躍るように吸い込まれていきます。ハリのある素麺は、口の中でも存在感が光り、コシのあるうどんのように、プチッと小刻み良い歯切れがあります。素麺の主な素材は、小麦粉と塩水。だからこそ、小麦は厳選したものが大切で、小麦粉の品質が豊かな小麦の香りに繋がります。素麺とはほんとうに不思議なものです。シンプルなのに、素材と製法でこんなにもおいしさが変わるのですから。手延べ麺の素晴らしさを改めて感じます。

幾重にも重ねて、コシを育てる。

手延べならではのなめらかさとコシは、縄のように何度もねじりをかけながら、幾重にも麺を重ね合わせることで丁寧に育てられます。手延べは「寝かせる」、「延ばす」の繰り返し。生地の塊を機械に通し板状にした後、極太の棒状にして、さらに3本の麺に分けていきます。ようやく中太麺になったかと思えば、また麺をくっつけて極太麺に戻し、同じ作業を2回繰り返します。この手間が、ブチッと切れないハリのある強靭なコシに繋がっていくのです。繰り返す度に、麺はどんどんとツヤを増して磨き上げられ、輝き始めていくようでした。

手延べというと、生地を足踏みしたり、竹棒で引き延ばしたりする姿を思い浮かべるかもしれません。本多さんのお父さんが創業した約40年前は、家族三人で生地を足踏みしていたそうです。それからまもなく、素麺業の発展とともに、人力の作業を手助けするものとして各地で機械が導入されました。とはいえ、この頃のものは機械と言っても、オートメーションとは程遠いもの。足踏みミシンのような昭和の電動機という印象で、人の手なしで動かせないところは、〝道具〟と呼ぶ方が言い当てているように思います。

機械を動かす間も、そばに付きっきり。
作り手が目で生地の状態を見ながら、手をかけ、寄り添いながら麺のお世話をすることが欠かせないのです。てまひまをかけて細く長い麵に延ばしていく。私たち手延べ職人の仕事は、昔も今も変わりません」。江戸時代から続く手延べの技とともに受け継いでいるのは、手延べ職人としての誇りと気概でした。

糸のように細く、しなやかに。

空が明るみかける頃、カシャカシャ、カシャカシャとけたたましい音が製麺所に鳴り響きます。機織りを思わせるようなノスタルジックな音。ホース程の太さにまでなった麺を、今度は足踏みミシンのような機械にかけて、さらに細く仕上げていきます。スルスルと糸を巻くように機械をくぐり抜けながら、一本ずつ製麺。ここでもひねりを入れて、ねじりをかけます。この時、本多さんはひとときも目を離さず、何度も行き来する麺の一本一本に真剣な眼差しを注ぎます。最初は3杯だった麺の桶は、麺が細くなるごとに倍、倍と増えていき、その分、麺を通す作業も倍、倍と増えていきます。そして8時には、機械も人手もフル稼働。生地ねから約9時間、背丈程にまで細くなった麺は、ようやく最後の乾燥作業にたどり着きます。

寒さ厳しい、冬季に製麺。

風が吹けば、さらさらとなびく髪のような麺線。光を透かすほど、繊細で美しい素麺のカーテンが一面に広がります。こんなに細くても、引っ張ってもちぎれない麺の弾力は、丹念に何度もねじりをかけてきた証。手延べの手法がなせる業です。麺は丸一日干して完成。今では、空調の発達から一年中作られる素麺ですが、昔は乾燥に最適な“寒”がある冬季に作られました。茅乃舎の素麺は、今も冬季限定で作っていただいています。「冬に作る素麺はやっぱりおいしさが違います」と本多さん。もっちりとコシある弾力、広がる小麦のおいしさをご堪能ください。

手延べ製法を未来へ。

おいしい素麺のために手延べ製法を残してほしいという思い。一方で、その大変さも感じました。私たちにできることはなんでしょうか。まずは、一本の素麺に費やされるてまひまを知ることかもしれません。早朝に目が覚めた時、本多さんの姿が頭をよぎります。私たちの食は、素晴らしい作り手があってはじめて、おいしさを噛み締められることに改めて感謝の気持ちが湧いてきます。

素麺に魅了された人生。

「一日中、素麺工場にいるから、近所の人とも顔を合わさないくらい素麺にかかりっきり。好きでないとできない仕事です。17歳の頃から42年、一度たりとも嫌だと思ったことがありません。私は、素麺屋が天職です」。熟練の職人の目には、好きなことに没頭する青年のような凛々しい輝きがありました。毎日繰り返される作業にも、一点の妥協もなく、一回一回が常に真剣勝負。素麺をこよなく愛する人の背中は、とても美しく見えました。素麺の虜になり、誠実に向き合い続けた人生。「そうめんの山道」の看板には、こう書かれていました。

「近道をせず、山道をゆく」

産地での食べ方を
教えていただきました。

産地での食べ方

島原素麺の地獄炊き

本多さんの奥さま久美子さんに、南島原での素麺の食べ方を教えていただきました。野菜と素麺を一緒に煮込み、お味噌を溶き入れた具だくさんの素麺汁。鍋ひとつで作れ、素麺は水洗いをせず、茹で汁ごといただきます。お味噌の風味がやさしい一品です。

素麺の地獄炊き(2人前)
作り方

【材料】素麺2束、お好みの野菜(大根、人参、白菜など)、椎茸、丸天、薄揚げ、蒲鉾、葱

①具材は薄切りにしておく。
②鍋に水を沸かし、だし、具材を入れて煮る。
③素麺を入れ、箸で混ぜ、約1分煮込む。
④火を止めて、味噌を溶き入れる(素麺から塩分が出るため控えめに)。
⑤椀に盛り、蒲鉾、葱を添える。

※素麺は通常の茹で時間より短く、やや硬めに茹でます。茹で汁ごと味わう地獄煮ですが、本多さんの素麺は、冬季製造のため素麺から出る塩分も程よい加減です。

小麦が香り、
もっちりとコシがある。

北海道産「ゆめちから」などの国産小麦を100%使用し、手延べ製法で仕上げた茅乃舎限定別誂え品。
細くてしなやかな麺は、もっちりとしながらも、歯切れよく、なめらかです。素麺づくりに最適な冬季に製造しています。

だしか、つゆか。
そう思うほど
だしが入っています。

「素麺つゆ」を開発することになった時、料理人が作るように丁寧に、きちんとだしをとって調味した、素麺つゆに挑戦したいと思いました。そのためには、いかに濃く、だしを生かせるかが勝負でした。だし素材をできる限りふんだんに使うこと、雑節などを取り入れて多種のだし素材を使うこと。だしを際立たせたつゆづくりを追求したのです。素麺のつゆにここまでだしを豊かに使えるのも、茅乃舎ならではかもしれません。

使用したのは、鰹節や焼きあご、昆布、宗田節、鯖節の5種。上質な素材で、ひとつひとつの抽出方法も工夫しています。その豊かな濃いだしに淡口醤油やみりんを加えて、すっきりした甘さの素麺つゆが完成しました。

島原手延べ素麺を、
素麺つゆで。

茹でた素麺に、輪切りの生トマト、おろし大根、おろし生姜をのせます。素麺つゆ1:水4で希釈し、麺にかけてお召し上がりください。

胡麻だれ、梅だれ、つゆ。
多彩な味で、素麺を楽しむ。

鰹だしがおいしい冷やしつけだれ、新発売。

夏に何度も食べる素麺だから、多彩な楽しみ方で味わいたいものです。この夏、鰹だしがベースの冷たいつけだれを、梅味と胡麻味の2種でご用意しました。

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