辻仁成とめぐる、旅の一皿-「玉ねぎとマッシュルームのグラタンスープ」
フランスから届く、季節のレシピ
『ピアニシモ』『海峡の光』『白仏』など多数の著書で知られる小説家の辻仁成さん。パリを拠点に幅広く活躍し、フランスの食文化を取り入れた料理や、息子さんに向けたあたたかい家庭料理でも知られています。実は長年、茅乃舎を愛用しているという辻さんが、今回届けてくれたのは「玉ねぎとマッシュルームのグラタンスープ」のレシピ。旅の香り漂う一皿をぜひ、お楽しみください。
辻 仁成
Hitonari Tsuji
フランスを拠点に全世界のおいしいを求めて旅し続ける全身表現者。小説家、ミュージシャン、画家、そして、愛情料理研究家。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎!
在仏歴が四半世紀を超えてしまいました。最初にフランスで部屋探しをしたのが2001年、ちょうど時代はユーロ通貨が導入された時でした。スーパーのレジ係がユーロ計算が思うようにできず、どこも長い行列ができていました。貴重な経験ですね。当時、1ユーロは100円だったのですが、現在は180円前後を行ったり来たり。円の価値が下がったというよりもEUがそれだけ大きくなったのかな、と思います。
さて、ユーロが導入されて、あちこちで混乱が続いていたその冬、ぼくはサンジェルマン・デ・プレのカフェで「Soupe à l’oignion オニオングラタンスープ」なるものを生まれてはじめて注文することになります。もちろん、日本でも玉ねぎのグラタンスープくらいはいただいたことはありましたよ。(ちなみに、フランスではスープは「飲む」じゃなく、「食べる」といいます!)しかし、本場のオニオングラタンスープのおいしさは別格でした。これがフランスの味なのか、と湯気立つスープを味わいながら、衝撃を受けたものです。ともかく、美味しい。ここまでふんだんにチーズを入れるのか、とその濃厚さにも驚かされましたが、玉ねぎがこれまた甘く、口腔はすっかりフランスの味にたぶらかされておりました。店によっては、スープボウルの上にパイ生地をかぶせて焼いたものもありました。ですから、ボウルの上にパイのドームが焼きあがって出てくるわけです。それをスプーンでたたき割り、パイ生地をスープに浸して頬張る。うーむ、これこそまさにフランスの味だ、と思いましたね。あれから25年もの歳月が流れたのですが、この季節になると、「オニオングラタンスープ」が恋しくなります。
茅乃舎さんが今のように大人気になる前、ぼくが息子のために食事を作っていた頃から、辻家では茅乃舎の「野菜だし」を愛用していました。当時、週刊誌でレシピ連載もしていましたので、そこでも「野菜だし」をかなりの頻度で使っていました。ぼくはお世辞が言えないタイプですので、本当においしかったから、茅乃舎のだしを多用したに過ぎません。時が流れ、この度、この連載の話が舞い込むことになります。ぼくがこの10年、毎日のように使ってきた茅乃舎のだしがここまで日本人の心に染み入ったのは、当然のことと思いますし、自分が最初に見つけたのだ、という身勝手な自負もございます。笑。
さて、今日、皆さんにご紹介する「玉ねぎとマッシュルームのグラタンスープ」は、秋から冬にかけ、ブラウンマッシュルームが八百屋さんに並ぶ季節にあわせて、ぼくなりに工夫を凝らして作り出した逸品です。いろいろと研究を重ねたのですが、茅乃舎には「野菜だし」と二分する人気商品の「椎茸だし」がありますね。今日はこの「椎茸だし」とブラウンマッシュルームを使って、グラタンスープにしてみることにしました。よくよく調べてみると、「椎茸だし」には干し椎茸だけじゃなく、舞茸も入っているのだとか。これは、かなりの使い道があると思いますよ。チキンやビーフのブイヨンがしっかりと入っているフランスのオニオングラタンスープは、日本人には濃厚すぎるので、この「椎茸だし」を利用して、さっぱりと仕上げてみることにしました。椎茸や舞茸の香りとマッシュルームの食感、オニオングラタンスープがこのキノコたちの参加で、ぐんと格調とやさしさを持ち込んでまいります。
題して「玉ねぎとマッシュルームのグラタンスープ」! 寒い時期、おいしさと幸せをご家庭に・・・。ボナペティ!
玉ねぎとマッシュルームのグラタンスープのレシピ(2人分)
材料
- 玉ねぎ
- 200g
- ブラウンマッシュルーム
- 6個(4個+仕上げ用2個)
- タイム
- 2、3本(生がなければ乾燥タイムで代用可)
- オリーブオイル
- 小さじ2
- 椎茸だし
- 1パック
- 水
- 400ml
- 塩
- 小さじ1
- バゲット(薄切り)
- 4枚
- にんにく
- 1片
- グラタン用チーズ
- 50g
- こしょう
- 適量
1
お鍋(辻はオーブン対応の15cmサイズのココット鍋で作っています)にオリーブオイルをひき、中強火で薄切りにした玉ねぎに塩ひとつまみ(分量外)を加え、飴色になるまでじっくり炒める。焦がさない程度に、でもしっかり焼き色をつけながら炒めてください。時々大さじ1程度の水を加えながら炒めると時短できます。
玉ねぎがしっかり飴色になったら、一口大に切ったマッシュルームを加え、一緒にさっと炒めます。
2
そこに分量の水を加え、椎茸だしの袋を破って加え、塩、タイムも加えて中火で10分ぐつぐつと煮込む。
3
トースターでバゲットをしっかり焼き、表面に半分に切った生のニンニクの断面をこすりつけておく。
耐熱の容器にスープを注ぎ、バゲットを並べ、チーズをたっぷりのせ、胡椒をふりかけたら200度で予熱したオーブンに入れ、10分焼く。オーブンが無ければ、オーブントースターでも良い。
4
飾り用のマッシュルームを好きな形に切り、オリーブオイルで焼き色をつけておく。
スープの表面のチーズが溶けて、ほんのり焼き色がついた美味しい合図。
5
仕上げに、焼いておいたマッシュルーム、生のタイムで飾りつけをしたら完成。
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