折々の会会員様限定で販売している「季告げシリーズ」から、ことし新しくデビューするのが、大分で実る山椒を使った「初摘み 山椒味噌」。
山椒生産者の渡邉さんを訪ねました。
「これが最初に植えた朝倉山椒。約40年前に植えた木ですね」
広大な山椒畑の入り口の小さなスペースに、はじまりの木はまるで邪魔になるのを避けるように畑の“脇”に遠慮がちに立っています。
「今は山椒が3反分の広さになったけれど、当初はそんなつもりはなくてね。むかしは、ここ一面田んぼでお米をつくっていて、減反政策がはじまって、どうしようかという時に、勧められたのが山椒だったんです。」
大分県日田の市街地から車を30~40分ほど走らせた標高600mの山間に、生産者・渡邉さんの山椒畑があります。
和歌山や高知、京都が山椒の名産地ですが、この日田でも山椒の栽培が行われています。20軒ほどの生産者がいらっしゃり、その山椒栽培を推進したのが、80歳を迎えられた渡邉英典(ひでのり)さんと、まゆ美さんご夫婦です。
「今は“ぶどう山椒”を主体にしているけれど、はじめた頃は、この辺りには“朝倉山椒”という品種しかなくて、それを10本ばかり植えたのがはじまりです」
木づくりはまず、近くの山に自生する“山山椒(=冬山椒)”を基に、台木用の山山椒の苗木を作ってきいきます。その苗木に、朝倉山椒やぶどう山椒を接木(つぎぎ)して木を育てていくと、山椒の木は強くなります。基となる自生の山山椒は幹が太く、小さい赤い実をつけ、葉はまるで別もの。勇ましいトゲもあります。渡邉さん曰く、台木の立派さは、鶏とチャボのたまごくらい違うそう。勢いのある山山椒に力を借りながら、木を育てます。
山椒の一番のむずかしさは、木が枯れやすいこと。とくに、“朝倉山椒”はとにかく枯れやすい。
「どうにかできないかと思っていたら、朝倉山椒よりは枯れにくい “ぶどう山椒”の苗が和歌山から手に入ってね。でも、木は大きくなってみないとわからん、木が育つまでがなかなか難しいところ」。
順調に育った木でも、実を収穫できるまでにはなんと3〜4年ほど待たなければなりません。
「それに、山椒の木の寿命は20年。他の作物に比べて短いけんね、20年経ったら植え替えると、最初から腹を決めとかないかんね」
お邪魔したのは5月末。いよいよ初摘みの実が実りはじめる時期です。青々と新芽が揺らぐ初夏の季節、山椒畑もふわふわと柔らかな葉っぱが茂り、山椒のいい香りが漂ってきます。
「山椒の香りは、ほんとうにいいね。立派に実がなったときがいちばんうれしい」と顔がゆるむ渡邉さん。葡萄のように実をよせて成る山椒は、房ごと細い枝を根元からプツッと爪で折るようにして手摘みで収穫します。想像通り、骨が折れる作業。
「細かい作業だから、こればっかりは手袋を付けてはできんよね。ハサミを使ってもいいけど、思ったところに刃が入らんし、切った枝を後で葉取りをしないといかんけんね。素手の感覚で、ひと房ひと房ね。年寄りの仕事の楽しみと思うて」。
6月から8月までが最盛期。実だけで800kgにもなるという収穫量です。今回の山椒味噌で使う“初摘み”の山椒は、実が柔らかくて種も白いもの。
初摘みの実は、摘める期間が限られていて、多くの量は採れません。摘むのが早すぎると実が潰れてしまうので、絶妙な具合で収穫していただきます。
「ことしは冬にちゃんと寒がきて、遅霜もなかったけん、いい実山椒ができそうねと話しよるんよ」
ご本人たちは控えめながら、日田の山椒栽培の第一人者として、地域の加工会社の方からも絶対の信頼が寄せられているおふたり。その腕と人柄が評判です。
渡邉さんは、山椒の苗木を他の農家の方にも分けていらっしゃるのですが、苗木を作れるのはこの地域では渡邉さんしかできないそう。また変色しやすい山椒は、収穫後の管理も大切で、知識が豊富な渡邉さんは管理も段違いの腕の良さ、鮮度も抜群なのです。そしてなにより、愛情を込めてつくられる姿に魅了されます。
今回、新発売となる「山椒味噌」は、すべて渡邉さんの実山椒を使っています。すり潰した山椒の実も練り込んでいますが、初摘み特有の柔らかさを生かして、一粒そのままを使っているのも注目していただきたいところです。
これから山椒を収穫後、6月16日(金)より予約が始まります。どうぞ、お楽しみにお待ちください。
季告げ販売ページはこちら
https://www.kubara.jp/tokitsuge/
※季告げは、久原本家ポイントサービス「折々の会」会員様限定の商品です。
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