野田琺瑯オリジナル保存容器ができるまで。〜後編〜

野田琺瑯との手を携えて実現した、コラボレーション商品「持ち手付味噌ストッカー」。理想の容器が完成するまでの開発秘話を、ものづくりの現場からお届けします。

前半でご紹介した素地加工を手がける昌栄工業に続き、後半は野田琺瑯社長の野田靖智さんと共に栃木県にある琺瑯工場を訪ねました。

野田琺瑯を訪ねて。

野田琺瑯社長の野田靖智さん

宮﨑

「伝統を受け継ぎつつ、現代の暮らしに合わせたスタイルで家庭料理を応援したい」という野田琺瑯さんのモノづくりに対する理念にとても共感しているので、今回のオリジナル商品が実現して、本当に光栄です。

野田

創業以来琺瑯づくり一筋に歩みつづけてきましたが、兼ねてより、人々の健全な生活を考える時、人間の根源である「食生活」を軸にして見直してみることが大切だと考えています。食品メーカーとはいつかご一緒してみたいと思っていましたので、互いの意見をきちんと交換しつつ、こだわりの詰まったオリジナル商品が実現でき、とても嬉しく思っています。

すべての工程が、工員の手しごとによって行われる。

宮﨑

改めて、琺瑯の魅力はどこにあると思いますか?

野田

頑丈だけど錆びやすい金属質。腐食や摩耗、酸や塩分にも強く匂いがつきにくいけれど、壊れやすいガラス質。琺瑯は、強くて美しい2つの素材の長所を存分に生かした素材です。そういった琺瑯の魅力を生かすために、機能美が溢れるシンプルな製品づくりをモットーにしています。

宮﨑

その中で今回のオリジナル商品を考えるにあたって着目したのが、味噌の保存容器です。現在のライフスタイルに合わせて、味噌は1kgがちょうど収まる容量が理想的と考えました。野田琺瑯の既製の商品より少し高さが低くなったので、新しいサイズの容器と相性の良い持ち手も新たに開発していただきました。

完成したばかりの持ち手付味噌ストッカー。

野田

今回ご一緒して、時代のライフスタイルに順応する新たな製品を生み出すことの意義に共感いたしました。

完成した素地が、釉薬をまとい美しい白へ。

素地が詰まった大きなバスケットごと洗浄へ。

宮﨑

まずは簡単に、琺瑯づくりの工程作業について教えていただけますか。

野田

完成した素地は、まず釉薬の密着性を高めるために鉄板についている油や汚れを洗い流す作業からスタートします。美しく仕上げるために、この洗浄作業はとても大切です。昌栄工業さんが素地を綺麗に作ってくれるので、作業がしやすくありがたいですね。

このままでもかっこいい、濃い灰色の下引き。

野田

そこから「下引き」と呼ばれる、鉄とガラスをしっかり密着させるための下地の釉薬をかけ、850度の焼成炉を通して焼き付けます。

850度の炉をくぐり、輻射熱によって釉薬を焼き付ける。

宮﨑

釉薬を掛けるのは一度ではないんですね。

野田

はい。何度も手直しを重ねながら、「上引き」と呼ばれるそれぞれの製品の色に合わせた釉薬をかけ、底面にロゴのハンコを押して、再び炉をくぐらせ焼成し、最終検品を経て完成です。

上引きが施され、いよいよ完成も間近。

宮﨑

濃い灰色の下引きも十分かっこいいですが、ホワイトシリーズの美しい白の発色の秘密は、この下引きにもあったんですね。

釉薬をまとったばかりの琺瑯は、ほんのり艶やか。
吊るされた状態で焼き付けされ、炉から出てくる。

野田

琺瑯の釉薬はガラス質なので、液体を触るとザラザラとした質感があります。これが燃焼して溶けることでつやと輝きが生まれます。弊社の白は、佇まいを意識して、温かさを感じる発色を大切にしています。

ガラス質、粘土、調整剤などを調合したカラフルな釉薬。

工場内は、まるでメリーゴーラウンド。

コンベアーに吊られ、琺瑯は工場内を巡る。

宮﨑

野田琺瑯さんの製品理念を体現するかのように、工場内はとても清潔かつ機能的で、惚れ惚れします。昌栄工業の昌林社長も、「やっとこ」から小さな引っ掛け針1つとっても汚れがなく、道具の手入れもとても行き届いているので、いつ来ても感心するとおっしゃっていました。

琺瑯を吊るす針も、製品に合わせて大小揃う。

野田

工場では現在50名程の従業員が分業で作業をおこなっています。「やっとこ」は釉薬をかける工程で使う道具で、製品を挟んで釉薬に浸し、遠心力を使って素早く振り払い、均一にします。

やっとこで挟んで、遠心力で釉薬を均等にする。
やっとこは製品の形や大きさに合わせて何百種類も揃う。

野田

やっとこは製品の形や大きさにあわせて使い分けていますが、熟練した職人は自分が使いやすいように道具を工夫し、整えています。

天井近くまで、縦横無尽にコンベアーが巡る。

宮﨑

中でも、工場内を縦横無尽に張り巡らされたコンベアーは本当に圧巻ですね。

野田

琺瑯は、釉掛け、乾燥、燃焼という工程で進むので、作業効率を考えて工場内を巡りながら乾燥させるこのスタイルになりました。取材にいらっしゃる方たちからは、メリーゴーラウンドみたい! とよく驚かれます。

焼成炉に入る前に、一つ一つ製品をチェック。

宮﨑

工場と聞くと、機械化されたオートメーションを想像しがちですが、ここではほぼすべての工程が手作業で行われていることに、正直驚きました。

仕上げのハンコ作業も手作業で。

野田

そうですね。すべての工程に人の手は欠かせません。機械は、あくまで人の手を助けるための道具のひとつにすぎません。1つ1つ製品を手に取り、チェックし、細かな修正を加えながら製品を完成させていきます。

オリジナル商品、ついに完成。

焼成炉から出てくると、美しい光沢のある琺瑯になる。

宮﨑

今回、初めて焼き上がった完成形を目にしましたが、持ち手もいい感じについて素晴らしい仕上がりになりましたね。携わっていただいた皆様の想いや道のりを思い起こすと感慨深いです。

野田

今回ご一緒させていただいて、茅乃舎さんが本当に使う人の目線でのモノづくりを大切にされているんだな、と感じました。御社のような良いおだしがあると、料理も楽しくなります。そうして皆さんがどんどん料理をしてくれると、この保存容器もたくさん活躍できるので嬉しいですね。

今回のオリジナル商品を実現させた、弊社商品開発担当の宮﨑(左)、野田琺瑯社長・野田靖智さん(中)、昌栄工業社長・昌林賢一さん(右)。

ものには作り手の想いが宿り、それはカタチとなって現れます。3社の想いが詰まったオリジナル商品が完成するまでの道のりは、前編と合わせてお楽しみください。

野田琺瑯オリジナル保存容器ができるまで。〜前編〜

茅乃舎ノ道具「持ち手付味噌ストッカー」
販売ページはこちら
https://www.kubara.jp/kayanoya/dougu/dougu/9717600/

野田琺瑯
1934年創業、琺瑯メーカー。2003年に「ホワイトシリーズ」の販売を開始。それまでは、琺瑯=カラフルな色や柄が主流で家庭用品の白い琺瑯は売れない、という業界の常識を覆す。「食材や料理の色が映える白色、シンプルで冷蔵庫に収まる蓋付きの容器」は、以来ロングセラーとなる。 
https://www.nodahoro.com/

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