高野竹工/茅乃舎特注 京竹短箸 前編

竹箸に息づく、名工の技と心

手馴染みが良く、機能性に優れた道具は使うほどに愛着が増す。そうした逸品をご家庭にお届けすることが、茅乃舎の変わらぬ願い。丁寧な仕事で作られた竹箸も、“食卓にあると便利な取り箸を作りたい”との発想から生まれた。一般的なサイズより短めの、19cmの商品となっている。

製造を担っていただいたのは京都の「高野竹工」さん。茶道具の名工が興し、現在は竹にとどまらず工芸品から日用品まで幅広い商品を手がけている。ものづくりへの真摯な姿勢に感銘を受け、かねてより私たちが道具づくりをご一緒したいと熱望してきたメーカーだ。今回は竹箸の企画を担当した茅乃舎の宮﨑とともに、高野竹工のものづくりの現場を訪問。工房を併設した社屋に着くと、西田隼人さんが笑顔で迎えてくれた。

卓越した茶道具で名高き工房へ

そう遠くない場所に、広く青々とした竹林が見える。風が吹くと、快いざわめきが聞こえた気がした。

高野竹工は竹の名産地、京都府長岡京市にある。質の高いこの地の竹は、奈良時代には天皇家の箸の素材に、江戸期には年貢として用いられたという。

創業者は、戦前から続く竹工芸店に生まれた不窮斎(ふきゅうさい)高野忠男氏。千利休の心眼に打たれ、茶道具作家を志した。卓越した数々の作品により一代で声望を確立。美の追求に半生を賭けた先代は2010年に永眠するが、その遺志は、今も約20名の職人の心に息づいている。

「今ままでに、オリジナルも含めて8000種以上の商品を作っています。15年ほど前までは9割が茶道具でしたが、変化する需要や流通の仕組みに対応するため、日用品も手がけ始めました」

路線変更のきっかけは2008年の“リーマンショック”だった。世界的な経済不況の煽りは、茶道具の制作現場にも及んだ。徐々に返品や在庫が増える危機感の中で、舵を切った。「もともと素材や職人に事欠かず、全工程を一括できる強みを持ったメーカーです。何でも作れる自信はありました」。持ち前の技術力はほどなく各方面の関心を集め、商品企画やイベントなどの協力依頼は引きも切らない。
「商品の幅を広げたことは、職人たちにとっても良かったと思います。茶道具は一部の方が使うものですが、日常生活で使える道具を作ることでたくさんの方が愛用してくださるようになった。それはやっぱり励みになります」

金閣寺の希少な古材で制作された木箱。これから社内の蒔絵職人によって金箔が貼られていく。
お会いした瞬間から熱量高く案内してくださった西田隼人さん。商品企画や製造現場のマネジメントなどに日々奔走する。

竹林を育てることから始まる、竹を知り尽くす職人たち

ここで作られるものの1つに、年間売上の約3割を占める箸がある。機械任せの量産品ではなく、随所に人の手が介在し、味わいや温かみが吹き込まれた労作だ。

職人たちの情熱は、まず素材に注がれる。竹工芸の世界では稀なことだが、高野竹工では社員自らが竹林を管理し、伐採まで行うという。「良い商品を目指すなら、素材も納得いくものを使いたい」。そうした純粋な意欲を象徴するようなエピソードだ。伐採するのは、生育3年前後のよく吟味された竹のみ。これを数年乾燥させ、さらに油抜きをしたものが、ようやく製造のスタートラインに立つ。

ベテランと若手が一丸で仕事に臨む工房。機械を導入しながらも、最後に物を言うのは職人の勘。

竹はナタでざっくり割った後、「突き出し」という工程でさらに細く裁断。箸の形状に合わせて長さと幅を調整したら、表面を何度も削り滑らかにする。1本ずつ加熱し、素早く竹の歪みを直す「ため直し」では、熟練職人の正確な手さばきと根気に見惚れる。「このひと手間で持ちやすくなりますし、隙間がなくなるから箸としての機能性も高くなります」。職人であり経営面のマネージメントもされている野々村芳寛さんが、手中の“作品”を慈しむように見つめる。

「突き出し」の様子。次々と裁断される竹が、秩序正しく積み上げられる。
ため直し前の加熱の様子。「竹は個体差が大きく、扱いが難しい素材なんです」と野々村さん。

工房では、箸になる前の竹素材がブロックのように積み上げられていた。聞けば高野竹工では、最初に割るところから箸に仕上がるまで1つの竹筒をバラバラにせず、整然と並んだ状態で各工程に回すという。これは、あえて隣り合った竹同士を1組にするため。そうすれば1本1本の反りが相性良く、引き寄せ合うように箸が合う。そのうえ柄も自然と繋がるため、1膳となった時に美しい無垢の風合いが楽しめるのだ。「些細なことかもしれませんが、私たちの譲れない工程のひとつですね」と西田さん。わずか1膳に投じられる献身を思い、吐息が漏れた。

使いやすく、耐久性のある竹箸を目指して

「実は工程の一つひとつに、ちゃんと意味があるんですよ」。そう言うと、西田さんが完成した竹箸を取り出す。長さ19cm、先端1.2mmの極細箸。高野竹工の技が反映された美しいフォルムだ。卓上に押し付けると、驚くほどに“しなる”。箸先はしなやかな曲線を描き、力を受け止め続ける。
「この強度は、箸の表面に残した竹の皮から生まれるものです。ただ竹の性質を理解してないと、皮は加工中にすぐ剥がれてしまう。そこで昔の職人が知恵を絞り、考案したのが先ほどの工程でした」。皮のない箸なら機械任せで大量生産も簡単。「でもそれだと私たちの目指す、使いやすくて耐久性のある箸にはならないのです」

職人が1本ずつ竹の歪みや反りを直す「ため直し」。現在この作業を行うメーカーは珍しいという。

このひたむきさ、誠実さこそが高野一門の誇り。私たち茅乃舎が共感し、コラボレーションを望んだ理由だ。

今回の竹箸には、料理にあわせて選んでいただけるよう、白竹・胡麻竹・燻し煤竹の3種類を作っていただいた。素材から製造まで一貫して管理されたものだから、安全性も保証付き。それに、凛とした1膳が食卓にあれば、きっとそこには得難い趣や格調が生まれるだろう。その変化の楽しさを、皆様にも味わってもらえたらと思う。

サンドペーパーで箸の両端を研磨し、1本ずつ形を整えていく。ここまでくればほぼ完成。
押しても折れにくい強さが魅力。極細箸は、京都の名だたる料亭でも使われているそう。

後編へつづく。

高野竹工/茅乃舎特注 京竹短箸 後編

高野竹工さんのホームページ。
https://www.takano-bamboo.jp/

長さ19㎝の「茅乃舎特注 京竹 短箸」。
茅乃舎の商品開発担当と対話を重ねて生まれた、機能美を備えた特注品です。

<写真上から>
茅乃舎特注 京竹 短箸(胡麻竹):1,100円(税込)
銘竹として茶道具や建築材に利用される胡麻竹。滑り止めとしても機能する手触りで、持ちやすく細やかな箸使いができます。食卓で邪魔しない取り箸として特別なサイズを作っていただきました。

茅乃舎特注 京竹 短箸(白竹):1,100円(税込)
京都の良質な青竹を火であぶり、油抜きして仕上げた短箸。食卓で邪魔しない取り箸として特別に作っていただきました。お弁当用や子ども用箸としても。丈夫で軽く、細やかな箸使いができます。

茅乃舎特注 京竹 短箸(燻し煤竹):1,320円(税込)
燻して炭化させることで、より強く深みのある色合いに仕上げました。お茶の席などおもてなしの場に相応しい風格の短箸です。箸先が細やかで使いやすく、普段使いの取り箸としてもおすすめです。

ご紹介の茅乃舎特注・京竹 短箸は、茅乃舎西宮ガーデンズ店にてお取り扱いしております。商品のご配送も承っております。詳細は直接店舗へご連絡ください。

店舗の詳細はこちら
西宮ガーデンズ店
https://www.kayanoya.com/shop/nishinomiya-gardens/

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