ARITA PLUS/片手土鍋 前編

■お話を伺った人:ARITA PLUS 寺内 信二さん・末村 安孝さん(佐賀県西松浦郡有田町)

「温かなスープも、とろける煮込み料理も、ほっこり湯気があがる炊き込みご飯も。すべてひとつの土鍋でつくれたら、毎日使いたくなるのでは…?」。商品開発メンバーの発案から生まれた、茅乃舎オリジナルの片手土鍋。棚の奥からよっこらしょと取り出す大きなサイズとはまたひと味違う、これからの土鍋の楽しみ方が見えてきた。

有田から世界へ発信する、ARITA PLUSと共に

片手土鍋の商品化をかなえてくださったのは、佐賀・有田のデザインプロジェクト「ARITA PLUS(アリタプラス)」メンバーのおふたりだ。「ARITA PLUS」は7つの窯元が集結し、自分たちの力で有田の器を世界に発信しつづけている。

そのプロデューサー的存在であり、窯元・李荘窯の代表で磁器製作も手掛けるのが寺内 信二さん。今回、茅乃舎が提案したコンセプトをひしと受け止め、デザインを起こすところから全体統括まで担っていただいた。「ARITA PLUS」のメンバーでもある安楽窯の末村 安孝さんは制作過程における多くのリクエストに向き合って、一つひとつ手作業で試行錯誤を行い、片手土鍋の完成へと導いてくださった。

向かって右手が「ARITA PLUS」の寺内 信二さん。中央が末村 安孝さん。料理好きのおふたりはLINEで土鍋の使い心地を報告しあう仲。

使い勝手のいい土鍋は、ミルクパンのイメージ

ここで、茅乃舎から掲示したおふたりへのリクエストを羅列してみよう。まず、1〜2人前のお粥や汁物にちょうどいいサイズ感。具と水300〜400mlがちょうど良くおさまり、茅乃舎のだし1袋を使うのにもぴったり。お米を炊いても吹きこぼれない蓋の設計も大切であるし、柄はミトンでもつかみやすいようなるべく長く。それでいて気軽に使える軽さもほしい。恐縮するほどの数のリクエストとなったが、「毎日使いたくなる土鍋」と銘打つにはどれも外せなかった。

打ち合わせを重ねるうちに寺内さんがひらめいたのは“和製のミルクパン”のイメージ。コンロの横にいつも置いてあって、必要に応じてさっと使える。沸騰するのもスピーディ。忙しい平日や朝の時間にも臆せず使える今までにない土鍋だ。

白壁の倉庫をリノベーションした「ARITA PLUS」のオフィスは、有田の器屋が軒を連ねる札ノ辻交差点から400mほどの距離。2Fはシェアオフィスだ。

長めの取っ手は、知恵と工夫の結晶

数々の難題を解決したうえでの商品化、つまり大量生産を実現するには、粘土を型にはめて成形する製法が最も適している。しかし、寺内さんと末村さんが採択したのは「ヘラづくり」という製法だった。土鍋の外観を手仕事で削り出すことによって、本体に優しいリズムと佇まいを添えた。

成形で困難を極めたのは、取っ手の部分だ。土鍋の重量を少しでも軽くするために、内部の粘土をヘラで取り除き、筒状にした。「手が入らない細いパーツにヘラを使ったのは初めてで。しかも柄が長めなので奥までヘラを届かせる技術が必要でした」と末村さん。長い取っ手と本体の接合も工夫が必要な工程。密着度の高い土をかますなど、何度も試作を繰り返した。末村さんが「新しい技術をひとつ開発してしまいましたよ」というくらいのご苦労をかけた。その分、想像以上の出来栄えの土鍋が完成することとなった。

手仕事ゆえに量産のハードルは高く、「最初はお断りしようと思ったぐらいですよ」と末村さんは笑っていた。
洗って伏せて置いた時、柄がじゃまにならない絶妙な長さ。土鍋の中身が煮たぎっている時でも、取っ手の先端部分はあまり熱くならない。

磁器の町で生まれた、すべてが天然素材の土鍋

磁器で知られる有田でなぜ土鍋なのか。その理由は、末村さんが営む安楽窯の母体・末村窯業有限株式会社にある。昭和13年の創業以来、磁器を焼成する際に必要な窯業資材を製造してきた窯元なのだ。おのずと耐火性のものづくりに強くなり、土鍋の強度は国内でも飛び抜けた存在だ。安孝さんは3代目にあたる。

その技術の歴史を注ぎ込んだ片手土鍋の強度はすばらしく、700℃まで熱した土鍋を水につけても割れない。丁寧に使えば一生ものだ。オーブン使いもできるので、シチューのパイ包み焼きなどの欧風料理にも挑戦できそう。油も引ける。ちなみに末村さんは趣味のキャンプにも土鍋を持参し、直火調理をなさるとか。

土鍋の黒くつややかな表面は釉薬によるもの。つるんとした質感で、食材がこびりつかずに、洗いやすい。その色が料理を引き立て、素材を美しく見せてくれる。

黒い釉薬はマットな質感と検討した結果、より和食に合うツヤ有りに決定。石灰を調合することで上品なツヤが出る。季節で変わる微妙な配合は、手で混ぜて感覚で見極める。
耐火性に優れた土鍋をつくるため、岐阜県から取り寄せた粘土やペタライトなど天然材料を混ぜてオリジナル配合の粘土をつくる。
工房の裏山は水源の森。ここから湧き出た水を使い粘土を練る。釉薬も同じく湧水を活用。
湧水で練った粘土はまとまりが良く、手につきにくい。毎日触っていると、水道水で練ったものとの違いが分かる。
工房内に積み上げられた素焼きの土鍋。片手土鍋の場合、1250℃で20〜25時間も焼成するので、強くて固い。

ぐつぐつ沸く土鍋を、そのまま食卓へ運ぶしあわせ

片手土鍋を使ってみると、長めの取っ手の使いやすさがよく分かる。かき混ぜるときは、ちょっと手を添えて。持ち運びも、ふきんや手ぬぐいで十分だ。茅乃舎だし1袋と大根をシンプルに煮れば、芯までじっくり味がしみる。火を止めてしばらく余熱で放っておくのも上手な使い方。グツグツたぎったら鍋ごとを食卓に運ぶのにも安定感があった。まさに毎日使いたくなる道具。その言葉が凝縮した片手土鍋となった。

台所の棚にも違和感なく収まるサイズ感。土鍋を中心に献立づくりを広げていただけたら。
「有田だけに、土鍋であるけれど食器に近い焼き方をしています。だから強い」とおふたり。片手土鍋がみなさんの長年のパートナーになることを願って。

ARITA PLUSのHP
http://www.arita-plus.com/

<片手土鍋と茅乃舎のだし>
 お料理レシピを後編でご紹介しています。

ARITA PLUS/片手土鍋 後編

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